耳垢
耳垢(みみあか・じこう)とは耳のなかの垢である。俗に耳糞(耳屎、みみくそ)とも言われている。空気中のほこり、皮膚の残骸などがたまったものと、外耳道の耳垢腺というところから出る分泌物が混ざったもの。舐めるとその味覚には渋味と苦味が感じられる。除去する必要があるとする意見としなくて良いという意見の双方がある。
乾性と湿性
耳垢は乾性耳垢(乾燥した耳垢)と湿性耳垢(湿った耳垢、俗に「べた耳」という)があることが知られている。湿った耳垢は優性遺伝し、乾いた耳垢は劣性遺伝することが明らかになっている。湿った耳垢の人は体質的に体臭が強い傾向がある。これは耳垢が湿るのは、耳の中にあるアポクリン腺から分泌される汗のためであり、アポクリン腺は体臭の原因でもあるためである。
この割合は人種によって大きく差があり、北部の中国人や韓国人で湿性耳垢は4~7%、ミクロネシア人やメラネシア人では60~70%、白人では90%以上、黒人は99.5%が湿性耳垢であると言われている。日本人全体では湿性耳垢の人は約16%だと言われている。ただ日本内でも北海道や沖縄と、本州の間で割合に大きな差があり、北海道では約50%が湿性耳垢であるとの報告がある[1]。これは、日本には元々湿性耳垢の縄文人が居住しており、やがて本州には乾性耳垢の弥生人が流入したが、その影響が及ばなかった北海道・沖縄には湿性耳垢が保存されたことによる、と説明されている。同様の研究は長崎県立長崎西高校の生物部も日本人類遺伝学会で2007年9月15日に発表しており、演者らによると乾性耳垢の人は西日本に多い傾向が見出されたとのことであり、渡来人の人骨が西日本で比較的よく発見される事実を証明するものであるとした[2]。
2006年1月29日、長崎大学の研究グループの論文発表で、耳垢が湿性か乾性かを決定するのはDNAの塩基配列の1か所の違いであることが判明[3]。また同論文では、「乾性耳垢」というものは本来存在せず、この場合は先天的に耳垢が生成されない体質であり、彼らが耳垢だと思っているものは耳壁の表皮や外部の埃などであることが述べられている。
耳掃除
外耳道(耳の穴)は、骨部と軟骨部に分かれている。骨部が内側で、軟骨部が外側である。皮膚は鼓膜がある内側から外側へ移動するように出来ており、正常であれば、奥に耳垢はたまることなく、軟骨部と骨部の移行部まで出てくる。すなわち、耳を掃除するのは、見える範囲内でいいということになる。