葉菜類
葉菜類(ようさいるい、英: leaf vegetables, leafy vegetables[1])とは、主に葉を食用部とする野菜のことであり、キャベツ、ホウレンソウ、セロリ、レタス、ネギなどがある。葉物(はもの)、葉物野菜(はものやさい)、葉野菜(はやさい)、菜葉(なっぱ)、菜(な)などとよばれることもある。
ウド、アスパラガス、タケノコなど地上部の茎を食用とする野菜は、茎菜類(けいさいるい、stem vegetables[2])とよばれる。葉と茎は分けずに利用されることも多く、葉菜類と茎菜類は合わせて葉茎菜類(ようけいさいるい)とよばれることもある。また、ブロッコリー、カリフラワー、食用菊、ミョウガなど花芽や花を食用とする野菜は、花菜類(かさいるい、flower vegetables[3])とよばれる。ただし、葉菜類、茎菜類、花菜類をまとめて葉菜類または葉茎菜類とすることも多い。以下では、この広義の意味での葉菜類について解説する。
定義
[編集]野菜のうち、葉を食用部とするものは、葉菜類とよばれる[4][5]。葉物[6]、葉物野菜[7]、葉野菜[8]、菜葉[9]、菜[10]などともよばれる。野菜の定義は明瞭ではなく、日本では一般的に、主食とはされない草本性の栽培植物を野菜としているが[5][11]、サンショウなど木本に由来するものであっても副食に利用されるものは野菜として扱われることが多い[12]。
アスパラガス、タケノコ、ウドのように地上部の茎(地上茎)を食用部とする野菜は、茎菜類とよばれる[5][13]。ただし、葉と茎を分けずに食用とするものも多く、茎菜類を葉菜類に含めたり、狭義の葉菜と茎菜は合わせて葉茎菜類とすることがある[5]。また、ブロッコリー、カリフラワー、アーティチョーク、ミョウガのように花芽や花、花序(花の集まり)を食用部とする野菜は、花菜類とよばれる[5][14]。これも茎や葉と分けずに利用されることがあり、狭義の葉菜類、茎菜類、花菜類を分けずに、まとめて葉菜類または葉茎菜類としていることも多い[5][15]。下表では、この広い意味での葉菜類(茎菜類、花菜類を含む)を示している。
広義の葉菜類は、菜類(アブラナ科の葉菜; キャベツ、ブロッコリー、ハクサイ、コマツナなど)、生菜・香辛菜類(生菜は生食用の菜; レタス、セロリ、パセリ、パクチー、シソ、バジル、ショウガ、ミョウガなど)、柔菜類(煮食用の菜; ミツバ、セリ、シュンギク、ホウレンソウ、アスパラガス、タケノコなど)、ネギ類(ネギ属の野菜; ネギ、ニラ、タマネギなど)に分けられることがある[5][12][16]。
ホウレンソウやコマツナのように葉が密に重なり合っていないものは非結球性葉菜類とよばれる[5][17]。それに対して、キャベツやハクサイ、レタスのように葉が密に重なって球状になるものは結球性葉菜類とよばれる[5][17]。葉が重なる様式には、キャベツやレタスのように互いに包み被さる(包被)ものと、ハクサイのように葉が互いに抱き合う(抱合)ものがある[5]。結球性葉菜は葉が重なり合うことで軟白効果が生じ、柔軟で青臭さがなく、また非結球性葉菜に比べて輸送・貯蔵性が高い[5]。
葉菜類の中には、発芽直後の幼植物体を食用とするものがあり、一般的にスプラウト(sprout、スプラウト野菜)とよばれ、また新芽野菜、発芽野菜ともよばれる[18][19]。暗所で発芽・成長させたものはモヤシ型(緑豆、ニンニクなど)、暗所で発芽させて茎が伸びてから光を当てて緑化させるものはカイワレ型(ダイコン、ソバなど)、暗所で発芽後にすぐに光で緑化させるものは中間型(ブロッコリーなど)、発芽後に種皮ごと出荷するものは発芽したて(玄米、コムギ、オオムギ、キヌア、アマランサス、ダイズなど)とよばれる[20][21]。
葉菜類の中には、香りや辛味が強く、少量を料理に添えたり調味に使われるもの(香辛野菜)も多くある。日本料理ではサンショウ、シソ、ボウフウ、ミツバ、セリ、フキ、タデ、ショウガ、ミョウガ、ワサビ、ニラ、ネギ、ワケギ、アサツキなどが用いられ、薬味ともよばれる[22]。西洋料理ではバジル、タイム、ラベンダー、ミント、ローズマリー、オレガノ、セイボリー、パセリ、チャービル、フェンネル、キャラウェイ、タラゴン、クレソン、ケイパー、レモングラスなどが用いられ、薬用、香料、美容などに用いられるものも合わせてハーブとも総称される[23]。
栽培品である野菜に対して、野生品である食用植物は山菜とよばれ、フキやウド、アシタバ、ワラビなど茎葉を利用するものが多い[5][24]。山菜は一般的に栽培効率が悪いが、近年では地域産品の需要や販路が拡大しており、これに伴って市販されている"山菜"の多くは栽培品であり、これらを野菜に含めることもある[5][24][25][26]。
主な葉菜類
[編集]広義の葉菜(茎菜や花菜を含む)に分類されることがある野菜には、下表のようなものがある[27][12][15][25][28][29]。分類学的にはさまざまな科のものがあるが、特にアブラナ科やヒユ科、セリ科、キク科、ヒガンバナ科(ネギ属)のものが多い[5]。***は日本における指定野菜(消費量が多く、収穫量と出荷量が毎年調査される)、**は特定野菜(指定野菜に準ずる野菜)、*は地域特産野菜生産状況調査(調査は隔年)の対象種である(2024年現在)[30][31]。
ギャラリー
[編集]脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ a b 食用とされる菜花には、アブラナ(Brassica rapa)に由来するものと、セイヨウアブラナ(Brassica napus)に由来するものがある[12]。
- ^ 根菜としては指定野菜に指定されている。
- ^ a b c d e f g h i j 日本標準商品分類では「香辛野菜およびつまもの」に分類される[28]。
- ^ このほかに同属別種の Capparis aphylla、Capparis moonie、Capparis sepiaria、Capparis zeylanica、Capparis horrida なども利用されている[45]。
- ^ このほかに同属別種のウスベニアオイ (Malva sylvestris)、Malva pusilla も栽培されて利用される。
- ^ このほかに同属別種の Sesbania bispinosa も栽培されて利用される。
- ^ このほかに同属別種の Trigonella balansae も利用される。
- ^ ダイズ、リョクトウ、ケツルアズキ(ブラックマッペ)などが用いられる[69]。
- ^ このほかに同属別種の Amaranthus blitum、Amaranthus caudatus、Amaranthus dubius、Amaranthus gangeticus、Amaranthus lividus、Amaranthus mangostanus、Amaranthus polystachyus、Amaranthus spinosus、Amaranthus viridis も利用される[78]。
- ^ このほかに同属別種の Salvia hispanica、Salvia austriaca、Salvia viridis、Salvia tomentosa、Salvia pratensis も同様に利用される[102]。
- ^ このほかに同属別種の Thymus serpyllum、Thymus quinquecostatus、Thymus capitatus、Thymus mastichina なども同様に利用される[105]。
- ^ ハッカ (Mentha canadensis)、ペパーミント(Mentha × piperita)、スペアミント(Mentha spicata)などがある。
- ^ このほかに同属別種の Ocimum americanum、Ocimum gratissimum、Ocimum tenuiflorum、Ocimum gratissimum なども同様に利用される[108]。
- ^ このほかに同属別種のマヨラナ(マジョラム、Origanum majorana)、Origanum onites なども同様に利用される[110][111][111]。
- ^ このほかに類似種の Satureja montana、Satureja thymbra、Clinopodium nepeta なども同様に利用される[112]。
- ^ 根用の品種はセルリアックとよばれる[121]。
- ^ このほかに同属別種の Foeniculum vulgare、Foeniculum piperitum も同様に利用される[126]。
- ^ このほかに類似種の Trachyspermum ammi、Bunium bulbocastanum、Psammogeton involucratus も同様に利用される[130]。
- ^ 標準的な和名でニガナとよばれる植物は別種である。
- ^ このほかに同属別種の Gynura procumbens も利用される[152]。
- ^ このほかにヤブカンゾウ (Hemerocallis fulva var. kwanso)、ノカンゾウ (Hemerocallis fulva var. disticha)、マンシュウキスゲ(Hemerocallis lilioasphodelus)、ホソバカンゾウ (Hemerocallis lilioasphodelus var. minor) なども利用される[12][166]。
- ^ a b c 根菜として扱われることもあるが、可食部である鱗茎の主体は特殊化した葉(鱗茎葉)であり、葉菜類(葉茎菜類)として扱われることも多く[28][15]、またネギやニラなど他のネギ属野菜と合わせてネギ類[12]や鱗茎菜類[25]として他と分けられることもある。
- ^ エシャロット(エシャレット[28]、シャレット[25]、シャロット[32])は、本来はタマネギの1変種(Allium cepa var. aggregatum)であるが[32]、日本ではラッキョウを軟白栽培したものがエシャロットとよばれている[172]。
- ^ 根菜として(根ショウガ)は指定野菜に準ずる野菜に指定されている。
- ^ 葉茎菜に分類されることが多いが[25][28]、根菜に分類している例もある[5]。
- ^ 日本では主にモウソウチク (Phyllostachys edulis)、他にマダケ (Phyllostachys reticulata)、ハチク (Phyllostachys nigra) が栽培されているが、チシマザサ (Sasa kurilensis) なども食用とされる[181]。中国ではマダケ属 (Phyllostachys)、トウチク属 (Sinobambusa) などが[182]、東南アジアではホウライチク属 (Bambusa)、マチク属 (Dendrocalamus)、ダイマチク属 (Gigantochloa)、Leleba、ヒイランチク属 (Schizostachyum) など[183]が利用される。
- ^ このほかに同属別種の Cymbopogon martini、Cymbopogon nardus なども利用されている[187]。
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関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 葉菜類. コトバンクより2024年7月5日閲覧。
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- “主な野菜の主要な分類の比較”. 独立行政法人農畜産業振興機構. 2022年12月22日閲覧。
- “旬の野菜・くだもの検索結果:葉菜類”. JAグループ. 2024年7月5日閲覧。