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dBm

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
dBu(電圧源)とdBm(600Ω抵抗によって熱として消費される電力)の関係を示す概略図

dBmまたはデシベルミリワット(dBmW)は、電力を1ミリワット(mW)を基準値とするデシベル(dB)の値で表した単位である。電波や光ファイバーなどで信号の強さを表すのに用いられる。dBmで表すことで、非常に大きな値から非常に小さな値までを、以下のように少ない桁数の数字で簡便に表すことができる。

  • 1 nW = -60 dBm
  • 1 µW = -30 dBm
  • 1 mW = 0 dBm
  • 1 W = 30 dBm
  • 1 kW = 60 dBm

これに対し、1ワット(W)を基準値としたものがdBWであり、その値は、dBmで表した時よりも30小さくなる。

単位の換算

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0 dBmの電力レベルは1 mWの電力に相当する。出力レベルの10 dB(dBmまたはdbW)の増加は、電力が10倍になったことを意味し、3 dBの増加は、電力が約2倍になったことを意味する。すなわち、3 dBmは約2 mWである。逆に、3 dBの減少は、電力が約半分になったことを意味する。すなわち、−3 dBmは約0.5 mWに相当する。

電力P(単位:mW)と電力レベルx(単位:dBm)の換算は、以下のようになる。

Pの単位をワットにすると、以下のようになる

電力レベル 電力 備考
80 dBm 100 kW サービスエリアが50km程度のFMラジオ局の送信出力
60 dBm 1 kW = 1,000 W 電子レンジの素子の放射出力
55 dBm ~300 W Kuバンド静止衛星の1チャンネルの送信出力
50 dBm 100 W 人体から放出される熱放射の合計。31.5 THz(9.5 µm)にピークがある。

一般的なアマチュア無線短波無線機の最大送信出力

40 dBm 10 W 一般的な電力線搬送通信(PLC)の送信出力
37 dBm 5 W 一般的なアマチュア無線のVHF/UHF携帯無線機の最大送信出力
36 dBm 4 W 多くの国における市民バンド無線局(27 MHz帯)の最大送信出力
33 dBm 2 W UMTS/3G携帯電話(出力クラス1)の最大送信出力

GSM850/900携帯電話の最大送信出力

30 dBm 1 W = 1,000 mW DCS・GSMの1800/1900 MHz帯携帯電話
29 dBm 794 mW
28 dBm 631 mW
27 dBm 500 mW 一般的な携帯電話の送信出力

UMTS/3G携帯電話(出力クラス2)の最大送信出力

26 dBm 400 mW
25 dBm 316 mW
24 dBm 251 mW UMTS/3G携帯電話(出力クラス3)の最大送信出力

1880–1900 MHz DECT(250 mW/チャンネル幅1728 kHz) IEEE 802.11j実効等方輻射電力(EIRP)

23 dBm 200 mW IEEE 802.11nIEEE 802.11aIEEE 802.11h実効等方輻射電力(EIRP)
22 dBm 158 mW
21 dBm 125 mW UMTS/3G携帯電話(出力クラス4)の最大送信出力
20 dBm 100 mW IEEE 802.11b/gの実効等方輻射電力(EIRP)

Bluetooth クラス 1(到達距離 100 m)

19 dBm 79 mW
18 dBm 63 mW
17 dBm 50 mW
15 dBm 32 mW 一般的なノートPCの無線LANの送信出力
10 dBm 10 mW
7 dBm 5.0 mW AM受信機の自動利得制御(AGC)回路をテストするのに必要な電力レベル
6 dBm 4.0 mW
5 dBm 3.2 mW
4 dBm 2.5 mW Bluetooth クラス 2(到達距離 10 m)
3 dBm 2.0 mW
2 dBm 1.6 mW
1 dBm 1.3 mW
0 dBm 1.0 mW = 1,000 µW Bluetooth クラス 3(到達距離 1 m)
−1 dBm 794 µW
−3 dBm 501 µW
−5 dBm 316 µW
−10 dBm 100 µW
−20 dBm 10 µW
−30 dBm 1.0 µW = 1,000 nW
−40 dBm 100 nW
−50 dBm 10 nW
−60 dBm 1.0 nW = 1,000 pW 地球視等級+3.5の恒星から1平方メートルあたり1ナノワットを受け取る[1]
−70 dBm 100 pW
−73 dBm 50.12 pW 一般的な短波無線機のSメーター英語版における"S9"の信号の強さ
−80 dBm 10 pW
−100 dBm 0.1 pW
−111 dBm 0.008 pW = 8 fW 商用GPSの単一チャネル単一帯域(2 MHz)の熱雑音
−127.5 dBm 0.178 fW = 178 aW GPS衛星の単一チャネルの受信電力
−174 dBm 0.004 aW = 4 zW 室温(20 °C)における1 Hz帯域の熱雑音
−192.5 dBm 0.056 zW = 56 yW 宇宙空間(4ケルビン)における1 Hz帯域の熱雑音
−∞ dBm 0 W 出力ゼロは、dBmで表現しようとすると負の無限大となる。

信号密度(単位面積あたりの電力)は、受信電力に波長の自乗を掛け、 4π で割ることで求められる(自由空間伝搬損失英語版を参照)。

特定の分野では回路が一定のインピーダンスで整合されていることがある。高周波回路では 50 Ω, 75 Ωなどで整合されている[2]。また古典的な業務用音響機器では 600 Ωで整合されていた[3]。この場合、電圧を計測すれば電力がわかる。 50 Ωでは約 0.224 V, 75 Ωでは約 0.274 V, 600 Ωでは約 0.775 V が 0 dBm (= 1 mW) に相当する。ただし 0 dBm はあくまで電力のことなので、インピーダンスが変わればこの関係は崩れる。業務用音響機器は後に 600 Ωで整合されなくなったため、上記の約 0.775 V のことを 0 dBu と呼ぶようになった。

dBmは国際単位系(SI)の一部ではないため、国際単位系に準拠した文書や体系での使用は推奨されない。対応するSI単位はワットである。ただし、2つの数字の単なる比であるデシベル(dB)ならば、使用可能である[4]

dBm単位での表現は、通常、光学的な出力や電力の測定に使用され、他の種類の仕事率(熱など)では使用されない。仕事率の比較には、電気的・光学的な仕事率以外の例が含まれている。

dBmが業界標準として最初に提案された[5]のは、"A New Standard Volume Indicator and Reference Level"(新しい標準音量指数と参照レベル)という論文である[6]

関連項目

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出典

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パブリックドメイン この記事にはパブリックドメインである、アメリカ合衆国連邦政府が作成した次の文書本文を含む。Federal Standard 1037C. アメリカ合衆国連邦政府一般調達局.MIL-STD-188内)

  1. ^ Radiant Flux of a Magnitude +3.5 Star
  2. ^ Carr, Joseph (2002). RF Components and Circuits. Newnes. pp. 45–46. ISBN 978-0750648448 
  3. ^ Bigelow, Stephen. Understanding Telephone Electronics. Newnes. pp. 16. ISBN 978-0750671750 
  4. ^ Thompson and Taylor 2008, Guide for the Use of the International System of Units (SI), NIST Special Publication SP811
  5. ^ Davis, Gary (1988). The Sound Reinforcement Handbook. Yamaha. pp. 22. ISBN 0881889008 
  6. ^ Chinn, H.A.; D.K. Gannett; R.M. Moris (January 1940). “A New Standard Volume Indicator and Reference Level”. Proceedings of the Institute of Radio Engineers 28 (1): 1–17. doi:10.1109/JRPROC.1940.228815. http://www.aes.org/aeshc/pdf/chinn_a-new-svi.pdf. 

外部リンク

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