不可抗力な“黒い笑い”に浜中文一が挑む!舞台『笑わせんな』レポート


匿名劇壇の福谷圭祐による新作戯曲×演出・オクイシュージのタッグによって生み出される舞台『笑わせんな』が東京・本多劇場にて、2024年2月8日(木)に開幕した。浜中文一を主演に迎える本作は、2月から始まる2024年度下北沢演劇祭の参加作品となっている。

くすぐりたい・くすぐられたい、そんな癖を抱えた人々が織りなす人間模様をブラックな笑いと共に描ききる本作。笑うことをテーマにした軽快なコメディがじわじわと、それでいて歪に狂っていく展開は、まさにキービジュアルの煽り文にあるように「愉快な狂気の物語」だ。

不可抗力な“黒い笑い”に浜中文一が挑む!舞台『笑わせんな』レポート

舞台となる美容院にはもう1つの顔がある。そこで働く美容師の藤原(浜中文一)は、オーナー・松本(入江雅人)に内緒で夜な夜な、人をくすぐりたい“ぐり”とくすぐられたい“ぐら”が集まる社会人サークルを主催しているのだ。

不可抗力な“黒い笑い”に浜中文一が挑む!舞台『笑わせんな』レポート

序盤はその存在を隠そうとする藤原と松本、事情を知らないのに首を突っ込もうとする常連客の山田(鳥越裕貴)、ただ髪を切ってもらいたいだけの客・佐藤(辻本耕志)を中心としたハイテンションなコメディが繰り広げられる。

大ベテランの入江や辻本を相手に、浜中も鳥越も一歩も退かず、それどころか前のめりで小さな笑いの種を撒いていく。2人ともさすがの関西出身といったところだろうか。終盤、物語はシリアスに舵を切るため、朗らかな雰囲気は序盤で堪能するのがおすすめだ。

不可抗力な“黒い笑い”に浜中文一が挑む!舞台『笑わせんな』レポート

山下リオ演じる比嘉は、“ぐり”である藤原の元パートナーであり元同僚という役柄。パートナー解消が理由でハサミが握れなくなってしまった藤原のピンチヒッターとして、事情を何も知らないオーナーに呼び戻されることに。

周りに馴染みきらない、凛とした佇まいの比嘉は、本作のキーパーソンでもある。“ぐら”である彼女が抱える本当の欲望は一体どんなことなのか。そんなことに思いを馳せながら物語を追っていくと、本作のまた違った一面が見えてくるかもしれない。

不可抗力な“黒い笑い”に浜中文一が挑む!舞台『笑わせんな』レポート

主演の浜中、山下、そして鳥越の3人は、互いにすれ違う思いを抱えるままならなさを、持ち前の演技力によって好演。等身大な人間的魅力を持つ一方で、ちょっとした引っ掛かりを感じるよう、絶妙な塩梅で生み出された登場人物たちは本作の見どころといえる。

閉店後の店に続々と集まってくるサークルメンバーは、個性的なように見えて、どこかしら共感できる人間臭さを持つ人々ばかりだ。

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彼氏に呼ばれただけの事情をしらない香坂(福井夏)と、その彼氏の鯉川(岐洲匠)というサークル初参加の2人を中心に、パートナーである田中(佐藤日向)と郷田(松島庄汰)、掴みどころのない吉岡(久ヶ沢徹)、大人の色気漂う三池(松原由希子)らが集まってくる。

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くすぐり・くすぐられたいという共通項だけで集まった年齢も職業も違う彼らは、それぞれに癖以外の思いや葛藤も抱えている。様々なタイプの人間が集まっているので、観客も誰かしらに共感できる部分を見出しながら、物語に没入していけるだろう。

不可抗力な“黒い笑い”に浜中文一が挑む!舞台『笑わせんな』レポート

不可抗力な“黒い笑い”に浜中文一が挑む!舞台『笑わせんな』レポート

共感できてしまうからこそ、個々の思いが絡まり空回り、向かっていく怒涛の結末に、愚かさを感じながらも愛しさを感じ取れるはずだ。

笑いたくないけど笑ってしまう。くすぐりによってもたらされる不可抗力の“笑い”は、どんなおかしさと悲劇を生みだしていくのだろうか。「笑うって一体なんだろう」、観劇後にそんな思考が浮かぶ不可抗力を、ぜひ劇場で体感してみてほしい。

不可抗力な“黒い笑い”に浜中文一が挑む!舞台『笑わせんな』レポート

舞台『笑わせんな』は、2月8日(木)から2月18日(日)まで本多劇場にて上演。上演時間は約2時間(休憩なし)を予定。

(取材・文・撮影/双海しお)

コメント紹介

演出:オクイシュージ

「何だこの奇妙な物語は」それが脚本を読んだ第一印象でした。
これをいかに楽しく展開し、いかに着地させればいいのか。なんか試されてる?そんな惑いを3〜4枚羽織りながら浜中文一、山下リオ、鳥越裕貴を中心とした皆と試行錯誤苦悶苦闘の末、1枚ずつ羽織りを脱ぎ捨て辿りつきました。脱ぎ過ぎて今はみんな丸裸です。
あとはお客様からの生の反応で暖を取らせてもらえれば完成となります。
仕上げるのはお客様。
どうぞ前のめりに楽しく、好きなだけ食べ散らかして仕上げて下さいまし。
任せました。

浜中文一

遂に、舞台「笑わせんな」の初日を迎える事ができました。
稽古場の雰囲気もずーっと良かった!
一回もどんよりする事なかった!
それくらい、演出のオクイさんを筆頭にキャスト、スタッフさんが本当に頑張ってたし、楽しんでました。
そんな作品なので、きっと面白いでしょう。
それはご覧になった人次第か。
ですが最後まで一所懸命気を抜かず楽しみたいと思います。

山下リオ

福谷さんの言葉の綾を、オクイさんが巧みに遊んでいるような作品だなと思います。とにかく私は悪戦苦闘しましたが、稽古場初日から先輩方の本気の遊びをたくさん観させていただき、日々の変化を全力で楽しませていただいてます。これは、ブラックコメディという枠にハマらないのでは。。。お客様と作る空間がどうなっていくのか、とても楽しみです。

鳥越裕貴

いよいよ本多劇場にて
舞台『笑わせんな』始まります。
1ヶ月間みっちり稽古をしてきました。
もう公演が折り返したんじゃないか?と思ってしまう程、濃い稽古の日々でした。
稽古中に何度も共演者の方々に”笑わせんな”と思ってしまった事があります。
この世界観に入り込むと気が狂います(笑)。
集中を途切らさず、2月18日までこの独特な世界観を山田として生き抜きたいと思います。

松島庄汰

まず誰一人欠ける事なく、無事に初日を迎えられそうで幸せに感じております。コメディと銘打っておりますし、役者も自由に動き回れる人達が揃ってますので、毎公演全く違う感触があるんだろうなと思います。正常な人はいません、どこか変な人達の趣味趣向を曝け出した美容院で起こる物語です。是非覗きに来て下さいませ、劇場でお待ちしております。

岐洲匠

自分にとって、ブラックコメディというジャンルが初めてだったので、不安も多く、手探りだらけの稽古期間中でしたが、今は、自分の中でモヤモヤしていた事が少しずつ繋がってきている感覚です。
何度も通し稽古ができたので、稽古を重ねるごとにやれる事、感じられることが増えていきました。
キャスト、スタッフ全員で協力して、アイディアを出し合ってできた作品です。
自分としては、手練れの先輩方の中、ついて行くのに必死でしたが、演出のオクイさんが粘り強く見ていて下さったことで、安心感がありました。自信を持って、自分がやれる事をやるしかないと思っています。
本番を通して、新しい何かが生まれることを信じて、全力で楽しもうと思います。

佐藤日向

本作で私が演じる田中みゆちゃんは、喜怒哀楽が卓球の如くポンポンと切り替わっていくので、一瞬でも気を抜くと追いつけなくなってしまう。そんな作品です。
観劇後に、人には言えない癖ややめられないことが自分の中にあるのだろうかと思わず考えてしまうと思います。
舞台『笑わせんな』、皆様のご来場をお待ちしております。

『笑わせんな』公演情報

上演スケジュール

2024年2月8日(木)~2月18日(日) 本多劇場
※2024年度下北沢演劇祭参加作品

キャスト・スタッフ

【出演】
浜中文一 山下リオ 鳥越裕貴 松島庄汰 岐洲匠 佐藤日向
松原由希子 福井夏/辻本耕志 久ヶ沢徹 入江雅人

【脚本】福谷圭祐
【演出】オクイシュージ

チケット

【一般】9,800円(税込)
【U-25チケット】6,500円(税込)

【チケット一般発売】1月11日(木)10:00~

あらすじ

とある美容室で開催されている社会人サークル。そこでは、閉ざされた空間でのみ鬱屈した願望を満たすことを赦された人々が集っていた。それは、「くすぐり、くすぐられる」ことで快楽を得るという癖。

その主催者である藤原(浜中文一)は、パートナー比嘉(山下リオ)との別れによって美容師として致命的なイップスを発症し、途方にくれていた。その最中、店の客であった山田(鳥越裕貴)から猛烈なアプローチを受ける。山田の手助けによりオーナー松本(入江雅人)からのクビ宣告は回避した藤原だったが、人間的なややこしさに満ち溢れたサークルメンバー、望まれない来訪者、外部からの風説がより藤原を追い詰めて行く。
そして発覚する、裏切り行為。

疑心暗鬼と混迷を深めて行く人間たちの仮面パーティーの果て、藤原は誰とどんな顔をしているのか。 物語の結末は、いつだって悲劇的な喜劇だ。

公式サイト

【公式サイト】https://mmj-pro.co.jp/warawasenna/

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