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井土ケ谷

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
環状1号線と京急本線が交差する井土ケ谷ガード。左側は井土ヶ谷駅。

井土ケ谷(いどがや)は、神奈川県横浜市南区の地名。現在、「井土ケ谷」のつく町丁は井土ケ谷上町・井土ケ谷中町・井土ケ谷下町があり、いずれも「ケ」は大文字で表記する[1]

井土ヶ谷東市街地住宅

地理

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南区中部の大岡川北側に、川の上流にあたる西側より井土ケ谷上町井土ケ谷中町井土ケ谷下町が設けられている。保土ケ谷駅方面と鎌倉街道通町1丁目交差点を結ぶ横浜市主要地方道84号保土ヶ谷宮元線環状1号線)を境に東側が井土ケ谷下町、西側が井土ケ谷中町で、さらにその西側が井土ケ谷上町となる。北部を東西に京浜急行本線、その南に桜木町方面と平戸方面を結ぶ幹線道路神奈川県道218号弥生台桜木町線(平戸桜木道路)が並行する。京浜急行と環状1号線が交差する位置には井土ヶ谷駅がある。

歴史

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戦国時代から見られる地名で、井出ケ谷、井土ヶ谷、井土谷とも書かれた[注釈 1]。『新編武蔵風土記稿』によると「此地殊に地窪なるゆえ、井戸谷の名起りしと云う。或云、鎌倉将軍時代村内に清冽の井にありし故起りし」とある[3][2]。また、同書によると江戸から9、東西10・南北5町ほどで家数は47軒[2]。地内を金沢道鎌倉往還が通った[2]大岡川支流の永田川・六ッ川に挟まれた低地に位置し、引越村の溜池からの農業用水も利用できたことから水利に恵まれ、水田が多くつくられた[4]横浜港が開港して間もない1863年10月14日文久3年9月2日)には、攘夷派浪士がフランス士官を襲撃・殺害した井土ヶ谷事件が発生した[5]

1889年(明治22年)4月1日、井土ヶ谷村とその周辺の堀之内村、蒔田村、下大岡村、上大岡村、弘明寺村、永田村、引越村、中里村、別所村、最戸村、久保村が合併して久良岐郡大岡川村が成立し、井土ヶ谷はその大字となる[6]1891年(明治24年)には鳥山肥料第一工場、1911年(明治44年)には豊田化製場などができた[4]。1911年4月1日に横浜市に編入、横浜市井土ケ谷町となる。鎌倉街道沿いは古くから発展していたが、大岡川で隔てられていたため大正時代までは農村風景が広がっていた[7]1914年(大正3年)、3代目井上良斎は東京の浅草橋場町からこの地に陶窯を移し、「良斎焼」を始めた[8]1921年(大正10年)には、弘明寺町にあった遊廓から芸妓置屋の一部が移ってきた[9]

1923年(大正12年)9月1日の関東大震災では家屋の倒壊があったが火災は免れたため、横浜市中心部から多くの人が移り住んだ[7]。震災復興事業として井土ヶ谷通町線などの街路が整備された。1927年昭和2年)10月1日には区制施行により中区の町名となる。1930年(昭和5年)には湘南電気鉄道(現在の京浜急行電鉄)が開通し井土ヶ谷駅が開設された[4]1936年(昭和11年)11月1日には井土ケ谷町を廃止し、新たに井土ケ谷上町・井土ケ谷中町・井土ケ谷下町が設けられた[10][1]。左記3町は、1943年(昭和18年)12月1日に中区から南区が分区したことに伴い、南区に編入された。

経済

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産業

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かつて存在した企業
畜産

脚注

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注釈

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  1. ^ 『新編武蔵風土記稿』の記述は井戸ヶ谷村[2]

出典

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  1. ^ a b 横浜市の町名一覧 南区” (PDF). 横浜市市民局窓口サービス課 (2017年10月23日). 2018年4月21日閲覧。
  2. ^ a b c d 新編武蔵風土記稿井戸ヶ谷村.
  3. ^ 市民局 1996, p. 83.
  4. ^ a b c 角川 1984, p. 121.
  5. ^ 南区の歴史 1976, pp. 86–90.
  6. ^ 角川 1984, p. 173.
  7. ^ a b 南区制50周年記念誌編集委員会 1994, p. 126.
  8. ^ 南区の歴史 1976, p. 543.
  9. ^ 角川 1984, p. 342.
  10. ^ 横浜市の町名一覧 中区” (PDF). 横浜市市民局窓口サービス課 (2017年10月23日). 2018年4月21日閲覧。
  11. ^ 『日本全国諸会社役員録 明治44年』神奈川県 上編438頁(国立国会図書館デジタルコレクション)。2022年1月24日閲覧。
  12. ^ 『横浜市工業名鑑・横浜市会社名鑑 大正10年12月現在』245頁(国立国会図書館デジタルコレクション)。2022年1月24日閲覧。
  13. ^ 『日本全国諸会社役員録 第44回』神奈川県 上編862頁(国立国会図書館デジタルコレクション)。2022年1月24日閲覧。
  14. ^ a b c d 『神奈川の畜産 昭和九年三月』27頁(国立国会図書館デジタルコレクション)。2021年8月2日閲覧。

参考文献

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  • 商業興信所編『日本全国諸会社役員録 明治44年』商業興信所、1893 - 1911年。
  • 横浜市商工課編『横浜市工業名鑑・横浜市会社名鑑 大正10年12月現在』横浜市商工課、1922年。
  • 『神奈川の畜産 昭和九年三月』神奈川縣内務部、1934年。
  • 商業興信所編『日本全国諸会社役員録 第44回』商業興信所、1936年。
  • 南区の歴史発刊実行委員会『南区の歴史』1976年3月30日。 
  • 角川日本地名大辞典 14 神奈川県』角川書店、1984年6月8日。 
  • 南区制50周年記念誌編集委員会『南区制50周年記念誌 「南・ひと・街・こころ」~南の風はあったかい~』1994年6月20日。 
  • 横浜市市民局総務部住居表示課『横浜の町名』1996年12月。 
  • 「井戸ヶ谷村」『新編武蔵風土記稿』 巻ノ78久良岐郡ノ6、内務省地理局、1884年6月。NDLJP:763986/46