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善のイデア

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

善のイデア: τοῦ ἀγαθοῦ ἰδέαν)とは、プラトン哲学における最重要徳目。

概要

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主著である『国家』において、プラトンは「哲人王」が目指すべき最高のものとして、この「善のイデア」を提示し、その説明を

という3つの比喩を用いて行った[1]

これらを通して、プラトンは「善のイデア」こそが、他の諸々のイデア(徳目の理念)を遥かに超越した、「イデア界」やその模像である「物理現象界」を成立させる原因となり、世界・認識の根源を司る最重要なものであることを指摘・主張する。

また後期作品『ティマイオス』では、「善のイデア」を世界の創造神デミウルゴスに喩えて表現している。

プラトンの弟子であったアリストテレスは、『ニコマコス倫理学』第1巻第6章において、この(具体性・個別性から切り離された独立的実体としての)「善のイデア」の実在性を否定して批判しており、これが両者の思想における決定的な相違点の1つとなっている。そしてアリストテレスは代わりに、具体的・個別的な善と結びついた「最高善」概念を提唱している。

(ちなみに、両者の他の相違点としては、『オルガノン』における弁証術ディアレクティケー)の位置付け・扱い、『形而上学』における「一と多」問題の扱い、『政治学』におけるプラトン的国制の画一性・硬直性批判、『弁論術』『詩学』における弁論術の位置付け・扱いなどがある。)

脚注

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  1. ^ 国家』第6巻-第7巻502C-521B

関連項目

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